【短編】君を想う
重なる残像
どうして俺、こんなことになってんだろう。
こうして俺はまた、このマンションに足を運ぶことになった。
右手にはさっき渡された紙袋。
左手にはコンビニの袋。
服は一度家に帰って着替えた。
……N高の制服は見たくないんじゃないかと思って。
まずはオートロックを解除してもらわないといけない。
だけど、5階だということは覚えているけど、部屋番号までは覚えていなかった。
困ったな……。
そう思った時、ここまでお世話になることのなかった地図を思い出した。
広げてみると、そこにはご丁寧に部屋番号が書いてある。
助かった。
部屋番号を押して呼び出しボタンを押した。
だけど、しばらく待ってみたけど返答がない。
もしかして寝てるかも。
ぐっすり寝てるのかもしれないし、もう1回鳴らしてみて出なかったら帰ろう。
そう思っていた時、
『……はい』
と、消えてしまいそうなほど小さい声がした。