【短編】君を想う
「おじゃましまーす……」


カーテンを閉め切っているせいか、部屋の中は薄暗かった。


「今、お茶でも……」

「あ、いや……」

「それくらいは出来ますよ」


彼女は力なく笑うと、キッチンに向かった。


「あっ! これ……。プリンとかスポーツドリンクとか買ってきたんで……」

コンビニの袋をそのまま差し出した。


一瞬びっくりした表情の彼女だったけど、すぐに小さく微笑んで、

「ありがとう」

と言ってそれを受け取った。


ローテーブルを通り越し、小さくカーテンをめくって外を見ると、大粒の雨が降り出したところだった。


「どうぞ」


カチャっという音と彼女の声に振り返ると、ローテーブルに紅茶が置かれていた。


「すいません……。あ、あとこれ、届け物です」


柏木さんから預かった紙袋を差し出した。


不思議な顔をした彼女が中身を見て、やっぱり不思議そうな顔をする。


やっぱり、口実だったんだろうな。


「あの……」

< 46 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop