【短編】君を想う
変わらない寝室。


あまり物がなくて、チェストの上の写真立ては伏せられたまま。



「そういえば、あなたは一度、入ってるんだったわね」

彼女は思い出してクスクス笑うと、大人しくベッドに潜り込んだ。


それでも時折、大きな音を立てる雷に肩を震わせた。




「……聞いてもいいですか?」

「何?」

横になったまま、彼女は俺に視線を向ける。


伏せられた写真立てに目をやると、それに気づいた彼女は小さく息を飲んだ。


「こないだの理由は……あれですか?」

「…………」


彼女は俺から視線を反らした。


「すみません、勝手に見て」

静かな寝室に、雷の音が響く。


彼女は手をぎゅっと握りしめていた。


「うちの……教師だったんですか?」

コクン

彼女は視線を反らしたまま、小さく頷いた。


「彼と……生徒と、つき合ってた?」

その言葉に彼女が俺を見た。


「現在進行形?」

その視線に怯むことなく質問を続ける。



別に、彼女を責めるつもりも、追い込むつもりもないのに。



「いつまでうちの学校に?」

「……2年前」

そう言った彼女の声は震えていた。


「別れた? 別れさせられた?」

言葉を変えて同じ質問をする。



──とうとう、彼女は涙を流した。

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