【短編】君を想う
幸せの在処
彼女の部屋を出て、千鶴に電話を掛けた。
「あ、千鶴? 今どこ?」
すると千鶴は「家だ」と答えた。
なら、大丈夫だっただろう。
隣に行けば美佳さんがいるはずだし、1人で震えていたってことはなさそうだ。
「智明……」
『えっ!?』
ふと出ただけだったのに、予想以上に動揺したような千鶴の反応。
そこにいるのか?
聞いてみれば、千鶴は答えにつまったのか黙り込んだ。
それって肯定なのに。
「やっぱり、敵わないのかな」
ため息混じりに漏れる本音。
ここぞ、って時に千鶴のそばにいるのは、やっぱり智明なんだな。
「智明に代わって?」
戸惑う千鶴に「いいから」と促すと、電話の向こうから聞こえる微かなやり取り。
『は?』
『代わってって……』
『なんなんだよ……もしもし?』
「智明? 千鶴のこと、ちゃんと守ってやったんだ? 偉いじゃん」
『あぁ?』
智明は不機嫌極まりない。
そこにいることを読まれていて機嫌が悪いのか、まさか……邪魔した、とか?
さすがに、この状況でそこまではいってないと思うけど。