【短編】君を想う
幸せの在処

彼女の部屋を出て、千鶴に電話を掛けた。


「あ、千鶴? 今どこ?」

すると千鶴は「家だ」と答えた。


なら、大丈夫だっただろう。

隣に行けば美佳さんがいるはずだし、1人で震えていたってことはなさそうだ。


「智明……」

『えっ!?』


ふと出ただけだったのに、予想以上に動揺したような千鶴の反応。


そこにいるのか?

聞いてみれば、千鶴は答えにつまったのか黙り込んだ。

それって肯定なのに。


「やっぱり、敵わないのかな」

ため息混じりに漏れる本音。


ここぞ、って時に千鶴のそばにいるのは、やっぱり智明なんだな。


「智明に代わって?」

戸惑う千鶴に「いいから」と促すと、電話の向こうから聞こえる微かなやり取り。

『は?』

『代わってって……』

『なんなんだよ……もしもし?』

「智明? 千鶴のこと、ちゃんと守ってやったんだ? 偉いじゃん」

『あぁ?』


智明は不機嫌極まりない。


そこにいることを読まれていて機嫌が悪いのか、まさか……邪魔した、とか?




さすがに、この状況でそこまではいってないと思うけど。

< 51 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop