【短編】君を想う
他の女に対しては結構テキトーなのに、千鶴のことになるとそうはいかないらしい。

それだけ本気で惚れてるってことだよな。




「じゃ、そういうことで。千鶴に代わって」

今度は俺の番。


桜井さんもきっと彼に思いを伝えるだろう。

それから智明も。


あれだけ発破かけたのに何も言わなかったら……一発殴ってやる。

だから、俺も──。



『修ちゃん?』


千鶴の声が鼓膜を揺らす。


一番愛しい女の声。


小さく息を吸って、それから告げた。


「千鶴。俺、千鶴のこと好きだよ」


吐き出してしまえば、何でもない言葉。


『え?』

「でも、智明のことも大事に思ってる」


伝えることのないと思ってた。


「だから2人には、自分の気持ちに素直になって欲しいんだ」


だけど、大切な気持ちこそすれ違わないように、ちゃんと言葉にしないとダメなんだ。





「俺たちの関係は、ずっと変わらないよ」


そう言った後、俺を呼ぶ千鶴の声は、震えていた──……。



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