粉雪2-sleeping beauty-
並べられていた料理は、まるでお子様ランチみたいで。


俺の誕生日だってのに、ケーキは相変わらずのガトーショコラだし。


その上に砂糖菓子の小人なんか置いちゃう千里を、馬鹿だと思いながら笑って。




俺さぁ…


誕生日なんて、まともに祝ってもらった記憶ないんだよ…。


だからちょっとだけ嬉しくて、そんでもって恥ずかしかった。



だからさぁ…


ようやくわかったんだよ、隼人さんが何を守りたかったのかが。


だからこそ、お前を幸せに出来なかった隼人さんを恨む気持ちもあったんだ。



お前が本当に祝いたかったのは、俺の誕生日じゃないだろ?


お前が本当に過ごしたかったのは、俺なんかじゃないだろ?



だけどこの時は、そんなことにも気付けなかった。


馬鹿みたいに喜んで、それを必死で隠して…。





『…マツももぉ、25か…。』


「誰かさんは、“オッサン”とか書いてたけど?」


『…すぐに、本当のオッサンになるよ…。』


悲しそうな顔で笑う千里に、何も言えなかった。



「…心配しなくても、お前はババアになっても綺麗だよ。」


『…それ、褒めてるつもり?』



千里が年を取ることを恐れていることくらい、すぐにわかった。


だけど、千里は生きてるから…。


ババアになるまで、生きててもらわなきゃ困るんだよ…。



あれは、俺のエゴを押し付けだけだったんだろうか?


それで俺は、お前を苦しめていたんだろうか?



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