粉雪2-sleeping beauty-
『…今日、お店来るの?』


「わかんねぇけど、何で?」


欠伸をしながら髪の毛をかき上げると、タイミング良く千里がコーヒーを差し出す。


そんなことも、いつの間にか当たり前の様になっていた。



『う~ん。
ちょっとね~。』


言葉を濁しながら、千里は深いため息をついた。



「…何?
売り上げヤバいとか?」


『…そんなんじゃないんだけどさぁ。』


「何だよ?」


相変わらず言葉を濁す千里を睨み付けた。



『―――あっ!
そろそろカレー出来てるんじゃない?』


その瞬間、千里の顔がパァっと明るくなる。


そして俺の質問をまるで無視して、小走りにキッチンに向かった。



「オイ!そんなのどーだって良いだろ?
話の途中で逃げるんじゃねぇよ!」


俺の声に、千里の足が止まる。


そして諦めたように、ため息をついて顔だけこちらに向けた。



『…何かね?
しつこいお客さん居るんだよ…。』


「…しつこい?」


眉をしかめた。



『…そうなの。
色々聞かれるし、プレゼントとかもくれるんだよ?』


「…何かされたとか?」


『う~ん。
そーゆーのはないんだけど…。』


鍋に入ったカレーをかき混ぜながら、少しだけ口を尖らせる千里を見つめた。



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