粉雪2-sleeping beauty-
ため息をつき、ビールの入ったグラスを持って立ち上がった。


そして、谷口の二つ隣に腰を下ろした。



「千里!
カレーにナス入れるなっつったろ!」


『…え?あぁ、うん…。』


よっぽど驚いたのか、千里は目を見開いていた。



思い知れ、オタク顔が!


谷口を横目に、少しだけ鼻で笑った。



『…僕も…ママのカレーが食べたい…。』


ボソッと言う谷口に、口元が引き攣った。



…何だ、コイツ…。


何か、マジで気持ち悪いし…。



『…とりあえず、今日は帰るよ…。
また来るからね…。』


谷口は俯いたままそれだけ言い残し、お金を置いて足早に店を後にした。


ヨレヨレの服も、丸められた猫背も、全てが薄気味悪い。




『…ありがと、マツ…。』


やっと肩の力が抜けたように、千里は力なく笑った。



「…いや、良いけど…。
つーか、マジでキモいな。」


俺の言葉に、千里はため息をついて煙草を咥えた。



「…まぁこれで、チャラだから。
お前も機嫌直せよ…。」


『…うん…。』



薄汚い蠅は、退治出来たと思ってたんだ。


本当の恐ろしさなんて、気付かなかった―――…



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