粉雪2-sleeping beauty-
―ガチャ…

『―――ッ!』


買い物袋を下げた千里は、俺を見た瞬間、目を泳がせた。



「…久しぶり。」


『…ひ…さしぶり。』


それだけ言って、逃げるようにキッチンに向かった。



「…お前、ちょっとこっち来て座れよ。」


咥え煙草で、千里を睨んだ。


ため息をついた千里は、冷蔵庫を開けようとしていた手を止め、

髪の毛をかき上げて俺の横に座った。




「…つけられてんだって?」


『―――ッ!』


瞬間、千里の肩が小さく撥ねる。



『…お喋りだね、ルミちゃん…。』


諦めたように、煙草を咥えた。



「…何で、俺に言わなかったんだ?」


『―――ッ!』


伏せた目が、こちらに向くことはない。



『…だって、マツにこれ以上、迷惑掛けたくないんだもん…。』


「…何だよ、ソレ?!」


拳を握り締め、唇を噛み締めた。



「…“俺に頼れ”って、言わなかったっけ?」


『…もぉ、十分頼ってるよ…。』


「―――ッ!」


瞬間、怒りが抑えきれなくなった。


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