粉雪2-sleeping beauty-
『―――お酒飲まなきゃ、やってられないね~!』


警察も帰り、ルミも帰った店で、千里は酒の入ったボトルを持ち上げた。


先ほどのことが嘘であるかのように、イタズラな笑顔を向けられる。



「…大丈夫なのか?」


『全然余裕じゃない?(笑)』


千里は当たり前のように、ケラケラと笑う。



『まぁ、殺され損ねちゃったけどさぁ。
マツが守ってくれたから、ちょっと嬉しかったよ。』


「―――ッ!」


喜んで良いのかもわからない。



この時俺がお前を守ったから、お前は苦しむことになったのかな?


でも、こんな男に連れてってもらっても、嬉しくないだろ?




「…殺されたかった?」


『…どーだろうね。
でも、死ぬんなら、綺麗に死にたいかな。』


そう言って、勝手に俺のグラスに乾杯した。


カランッと、綺麗なグラスのぶつかる音が響く。



「…お前は、長寿を全うしてから死ぬんだよ。」



だから今は、死んじゃダメだ。


俺の傍で、ずっと笑ってて欲しいんだよ…。



『…先の長い話になりそうだね。』


千里は、悲しそうに目を伏せた。



「…心配しなくても、それまで俺が居てやるよ。」


『え~?じゃあたしが、マツの介護すんの?
やだよも~!!』


頬を膨らませたその顔は、相変わらず子供みたいだった。


そんな顔に、少しだけ安心して笑い掛けた。


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