粉雪2-sleeping beauty-
―ガチャ…

「―――ッ!」


ドアを開けた瞬間、驚きと共にため息が襲ってきた。



『おかえり~♪』


そんな俺に、千里が駆け寄ってくる。



「…何で俺んちに居るんだよ?」


『請求書作ってあげてるでしょ~?
掃除もしてあげてるでしょ~?
洗濯だってしてあげてるでしょ~?』


指折り数えながら、口調は嫌味のようにしか聞こえない。



「…そりゃどーも。」


それだけ言い、逃げるようにリビングのソファーに向かった。


自分の髪の毛から、メーカーもわからないようなシャンプーの匂いが香る。


安いラブホテルでシャワーを浴びたばかりなのに、もぉ汗が滲む。



『どこ行ってたの~?』


俺の横に腰を下ろし、千里は上目遣いで煙草を咥えた。



「…別に。」


その顔から目線を外し、同じように煙草を咥えた。



『…まぁ、良いけどね。』


諦めたように、火をつけて吸い込む姿を横目に見た。



「…飯でも食いに行くか。」


『行く!!』


瞬間、千里の顔が明るくなった。



これは多分、罪悪感なんだろう。


他の女を抱きながら、お前のことを考えていたことに対する。



でも、しょうがねぇだろ、って。


言い訳ばっかしてた。


それが段々と、引き返せない方向に進んでいくんだ―――…


< 139 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop