粉雪2-sleeping beauty-
向かいに座ってるアホは、既に口説くモードに入っちゃってるし、

斜め向かいに座ってる似たようなアホも、鼻の下なんか伸ばしちゃってるし。


その状況に着いて行けず、一人口元が引き攣る俺。



『…社長はどの子が良いっすか?』


真鍋が、赤くなった顔で耳打ちしてきた。



「…どれも似たようなモンだろ。
てゆーかお前、そんなこと言ってたら、子供の顔見る前に追い出されるぞ?」


『俺は今回はパスっすかね。
誰と誰がくっつくか、楽しく傍観してますよ!(笑)』


ウシシッと笑った真鍋は、色んなヤツに絡みに行った。


その姿を目で追うと、無駄にくっつけようとしている作戦がみえみえだ。




『あのっ!
社長さんなんですか…?』


真鍋の席が空き、その隣に座っていた女が声を掛けて来た。



「…そーだけど?」


相変わらずビールを口に運びながら、興味もなく短く返した。



『…何かあたし達、迷惑でした…?』


戸惑いがちに聞かれた。



「…別に。
良いんじゃねぇの?」



“迷惑です”なんて、言える訳がない。



『良かった~!
社長さん、不機嫌そうに見えたから、心配してたんですよ~!』


女は安心したように、安堵のため息をついた。



「…悪いけど俺、元々こーゆー顔なんだよ。」


それだけ言い、逃げるように立ち上がった。


風俗やキャバの女なら慣れてるけど、

昼職の女なんて、何を話せば良いのかもわからない。


ぶっちゃけ、一番苦手だ。

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