粉雪2-sleeping beauty-
何だか、調子が狂う。


自分の名前なんて、好きだとも思わない。



『…じゃあ、“幸成さん”って呼んでも良いですか?』


「…良いけど…」


下の名前なんて呼ばれたのは、いつ以来だろう。


自分の名前なのに、何かムズムズする。



『じゃあ、あたしのことも“佐和”って呼んでくださいね!』



…何だろう、この女…。


飲み屋の女とも違うノリは、昼職だからだろうか。


とにかく俺は、違和感ばかりを覚える。




『…幸成さん…?』


「…え?あぁ、ごめん…。」


声を掛けられ、ハッとした。


見ると、いつの間にか信号は青に変わっている。



「…アンタ、何の仕事してんの?」


『あたし、OLです…。
コピーとか、雑用ばっかりですけど。』


「ふ~ん。」


普通の22で、昼職の女との会話って、こんなカンジなのだろうか。


結局俺は、河本が言った通り、真っ当な堅気の道なんて、歩けないんだと思う。


それくらい、陽の当たる世界は、俺にとって縁遠いものだ。



こんな仕事をしていても、根っこの部分なんて人間、変える事が出来ない。


いつまで俺は、こんな風なんだろう…。



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