粉雪2-sleeping beauty-
「何でお前、止めないんだよ?
嫌なら嫌って、ハッキリ言えば良いだろ?!」


振り絞るように、声を荒げた。


俺の言葉に、千里は静かに首を横に振った。



『…嫌だけど、あたしには止める権利ないから…。
言ったでしょ?
マツには、夢や希望があるんだよ…。
…あたしの所為で、ダメになって欲しくないから…。』


「―――ッ!」



…何で、俺のことばっか考えるんだろう…。


そうやって、全部押し殺して…。



「お前にだってあるだろ?!
夢だって、希望だって!
これから、色んなことがあるだろ?!」


『…うん、そうだね…。』


千里は、少しだけ悲しそうに笑っていた。


グラスから垂れる水滴が、右手の熱を奪っていく。


なのに俺の心の中は、マグマみたいにドロドロだ。



「…そんな寂しいこと…言うなよ…。」


左手で顔を覆い、振り絞った。



『…マツだって、寂しいこと言わないでよ…。
一緒に頑張ろう…?』


「―――ッ!」


『…あたしだって、どうしたら良いのかわかんないよ…。
でももぉ、隼人と同じような人好きになりたくないから…。』


言葉を失った。



俺が戻れば、また千里は傷つく…。


あの人と違う方法で、幸せにしたいと願っていたのに…。




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