粉雪2-sleeping beauty-
いつの間にか、お前は日曜日の朝から俺の家に押しかけてくるようになったよな。



『―――朝だよ!
いつまで寝てるつもり~?』



起こされるといつも、机の上には朝飯が並んでた。



『…マツの食事に付き合ってると、カロリー高いものばっか食べさせられるんだもん。
いい加減、太っちゃうじゃん!』



もぉ、腹の底から笑ったよ。


いつの間にかカロリーの心配なんかしちゃってるんだぜ?


食事に付き合ってたのは、俺の方だってのに…。



「…お前、少しは太れよ…。」


『絶対ヤダ!!
太ったら、お客さん来なくなっちゃうじゃん!!』



まぁ、確かにそうなんだけどさ。


昔みたいにやつれるよりは良い。



ちゃんとしたモンが食えるようになって、安心したんだよ。


暇つぶしでも、金を稼ぐ為でも何でも良いけど、

そんな風にして始めた店のことだって、ちゃんと考え出したんだ。


全てが、良い方向に進んでると思ってた。




一緒に買い物に行っても、お前は全く“物欲”ってものがなかった。


必要最低限の物以外、買わなかったもんな。



『…アイツ、何も欲しがらないんだよ…。
だからなのか、どーしても俺が買ってやりたくなるんだよ…。』



いつだったか、隼人さんが言ってたことを思い出した。


真っ白なキャンバスに色を塗るように、隼人さんの色に染まっていったんだもんな。


そんな隼人さんが居なくなってしまったら、

お前はどんな風になれば良いか、わからなくなってただけだったんだろうな。


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