粉雪2-sleeping beauty-
俺は、何を望んでいるんだろう…。


千里は、何を望んでいるんだろう…。



食べた焼肉の味なんて、覚えていない。


佐和が、どんな話をしていたのかも、覚えていない。




俺さぁ…


もぉ、訳わかんなくなっちゃってて…。


お前のこと、好きなのかどうかもわかんなくなってた…。



“あたしは、アンタなんか愛してないよ”


その言葉ばっか、グルグル回るんだよ…。



苦しくて苦しくて…


自分のことしか考えられなかった。


結局、逃げてただけなんだよ。




『…ごめんなさい。
結局、奢ってもらって…。』


帰り際、佐和が申し訳なさそうに頭を下げた。


俺が見つめると、佐和の瞳が不安そうに揺れる。



『…幸成…さん?』


その問い掛けに何も答えず、代わりに静かにキスをした。



なのに、何も感じない。


千里じゃない女は、誰でも一緒なんだな…。



ゆっくりと唇を離し、目を逸らすように煙草を咥えた。


火をつけてゆっくり吸い込むと、佐和が戸惑いがちに口を開いた。



『あのっ、あたし―――』


「ハッ!誘ったの、アンタだろ?」


『―――ッ!』


その言葉に、佐和はバッグを握り締めながら、唇を噛み締めて俯いた。


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