粉雪2-sleeping beauty-
『…あたし…、それでも良いです!』



やっぱりコイツも、ただの馬鹿だ。


本当に世の中みんな、コイツみたいだったら楽なのに…。



「…そう。
じゃあ、気が向いたら連絡してやるよ。」


口の端から煙を吐き出しながら、俺が目線を合わせることはなかった。



『…あたしが…彼女になれる日は…来ますか?』



これだから、遊びも知らない昼職の女は嫌いなんだ。


キスの一つで、何でここまで期待出来るんだろう…。



「…アンタ次第だよ。」



その台詞は、前に千里に言われた言葉そのままだ。


俺は千里の目から見たら、こんなに可笑しく見えていたのだろうか。


まるでコイツは、あの日の俺を見ているみたいで、気持ちが悪い。




『…じゃあ、あたし―――』


まだ何か言いたそうな佐和の言葉を、ため息をつきながら遮った。



「お疲れさん。」


『―――ッ!』


言葉を飲み込むように、佐和は俺から視線を外し、車のドアを開けた。



『…また、連絡しますから。』


そう言って締められたドアを確認し、何も言わず車を走らせた。


バックミラーには、立ち尽くしたままこちらを見ている佐和の姿が、

段々と小さくなって映る。


飲んでもいないのに、吐き気ばかりが襲ってくる。


とにかく、イラついて仕方がない。



< 161 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop