粉雪2-sleeping beauty-
―――当たり前だけど、あれから千里からの連絡はない。


もちろん、俺から連絡することもない。


代わりに、毎日毎日佐和からメールが来る。


それにだって、俺は返すことはない。


そんな俺とは関係なしに、日々は過ぎてゆく。




『社長!
もぉやめましょうよ!!
飲みすぎですって!!』


真鍋が困った顔で頭を抱える。


それを無視するように、グラスに残ったビールを一気に流し込む。



昔はストレスなんて、喧嘩して、その後単車で街を流せば、

すっかり忘れるくらいだった。


年を取るってことは、ってゆーより堅気になるってことは、窮屈で仕方がない。



『…マジで、何があったんすか?』


「別に。」



俺にだって、何が起こっているのかよくわからない。


何で千里がキレてるのかだって、全くわからない。



女との喧嘩なんて、ヤれば解決するもんだと思ってた。


ヤれないときは、どーすりゃ良いんだよ…。



怒りの次は、虚しさが襲ってきて。


そんな自分にイラついて。


結局の所、堂々巡りだ。



『…もぉ、俺じゃ手に負えないっすよ。
千里ママ呼びましょうか?』


「―――ッ!」


聞きたくもない名前に、瞬間、目を見開いた。



「真鍋!」


『―――ッ!』


胸ぐらを掴んだ俺に、真鍋は大きなため息をついた。



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