粉雪2-sleeping beauty-
―――いつの間にか、ニュースで帰省ラッシュが騒がれるようになった。
“お盆”なんて時期は、嫌でも俺を憂鬱にさせる。
「…お久しぶりです、隼人さん…。」
墓は綺麗に掃除されており、不似合いなほどの色とりどりの花が飾られていた。
眼下には海が広がっており、潮風がこんなに上の方まで届く。
咥えた煙草の煙は風に流され、少し目を細めてその場にしゃがみ込んだ。
「…春には来れなかったけど、アイツは来たんでしょ?」
聞いたって、何も返ってこない。
「…アンタがアイツに、変なこと吹き込んだんすか?
アンタ昔から、性格悪かったっすもんね…。」
ハッと笑い、地面の砂に煙草を押し当てた。
「…アンタが居るから悪いんすよ…。」
瞬間、突風が吹いた。
舞い上がった砂埃に、辺りにいた人達からか細い悲鳴を漏らす。
まるで背中を突き飛ばされたような、そんな感覚さえ覚えた。
「…俺が…悪いのかよ…。」
隼人さんが悪いんじゃないのか…。
あいつらの世界に土足で踏み込んだ、俺の方が悪いってことか。
そんなことさえ言われている気がして、ため息をついて立ち上がった。
遮る物のない夏の日差しは眩しくて、自分の影を見ながらサングラスを掛けた。
「…忘れんなよ。
アンタはもぉ、死んでんだ。」
吐き捨てるように言い、背を向けて足を進めた。
額には汗が滲み、文字通り、
汗水垂らしてあの人の為に働いていた日々を思い起こさせた。
だけどそれは全て、過去のことだ。
そんな残像を振り払うように、俺は一段一段、階段を下りる。
“お盆”なんて時期は、嫌でも俺を憂鬱にさせる。
「…お久しぶりです、隼人さん…。」
墓は綺麗に掃除されており、不似合いなほどの色とりどりの花が飾られていた。
眼下には海が広がっており、潮風がこんなに上の方まで届く。
咥えた煙草の煙は風に流され、少し目を細めてその場にしゃがみ込んだ。
「…春には来れなかったけど、アイツは来たんでしょ?」
聞いたって、何も返ってこない。
「…アンタがアイツに、変なこと吹き込んだんすか?
アンタ昔から、性格悪かったっすもんね…。」
ハッと笑い、地面の砂に煙草を押し当てた。
「…アンタが居るから悪いんすよ…。」
瞬間、突風が吹いた。
舞い上がった砂埃に、辺りにいた人達からか細い悲鳴を漏らす。
まるで背中を突き飛ばされたような、そんな感覚さえ覚えた。
「…俺が…悪いのかよ…。」
隼人さんが悪いんじゃないのか…。
あいつらの世界に土足で踏み込んだ、俺の方が悪いってことか。
そんなことさえ言われている気がして、ため息をついて立ち上がった。
遮る物のない夏の日差しは眩しくて、自分の影を見ながらサングラスを掛けた。
「…忘れんなよ。
アンタはもぉ、死んでんだ。」
吐き捨てるように言い、背を向けて足を進めた。
額には汗が滲み、文字通り、
汗水垂らしてあの人の為に働いていた日々を思い起こさせた。
だけどそれは全て、過去のことだ。
そんな残像を振り払うように、俺は一段一段、階段を下りる。