粉雪2-sleeping beauty-
煙草を咥えたまま、車内で冷房の風を浴びた。


暑すぎて、動くことも出来ない。


横目に見た助手席は、当たり前だけど誰も乗ってなくて。


“二週間”という時間の長さを、嫌でも感じさせた。



♪~♪~♪

突然鳴り響いた携帯にも、腕を動かすことさえ出来ない。


目を瞑っていても鳴り響く不快な音に、仕方なく携帯を取り出して通話ボタンを押した。


―ピッ…

「…ハイ。」


『…マツ…?』


「―――ッ!」


瞬間、耳を疑った。


恐る恐る携帯を耳から離し、ディスプレイを確認すると、

やっぱり“千里”の文字だった。



『…何やってるの…?』


言葉が見つからないのだろうか千里は、戸惑いがちに聞いてくる。



「…墓参りしてた。」


それだけ短く言った。


“あの人は、死んでるんだ”って気持ちを込めて。



『…そっか…。』


ポツリと呟いた千里は今、どんな顔をしているんだろう。



「…久々に、飯…でも行くか…?」


震えた声は、電話越しに伝わっていないだろうか。


そればかりが心配だった。



『…うん。』


返事を聞き、少しだけ安心した。


電話を切り、煙草を投げ捨てて車を発進させた。


期待と不安と、変な緊張が一緒になって、渇いたはずの手を再び湿らせる。


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