粉雪2-sleeping beauty-
―バタン!…

『…久しぶりだね…。』


そう言って、千里は車に乗り込んできた。


その瞬間、車内にスカルプチャーの香りが広がる。



『…何か、変なカンジだね。』


クスッと笑った千里は、煙草を咥えた。


その顔に、胸が締め付けられそうになる。


千里と会うことは、こんなにも息苦しいことだったんだろうか。



「…すげぇ会いたかった…。」


『―――ッ!』


瞬間、自分の言葉の意味を理解した。


何故自分の口からこんな言葉がついて出たのか、まるでわからない。



「…どこ行く…?」


サングラスをしているはずなのに、泳ぐ目がばれない様にと、急いで話題を変えた。



『…マツって結構、残酷なんだね…。』


「…え?」


火をつけて吸い込みながら窓の外を見つめて呟く千里に、驚いて声を上げた。



『…突き放したかと思えば、今みたいに優しいこと言って…。
あたしもぉ、疲れちゃったよ…。』


「…ごめっ…!」


頭で考えるより早く、言葉が出ていた。


だけどまだ、言われた意味が理解出来ていない。



『…あたし、ランチが食べたいな…。』


少しだけ笑った千里は、優しい顔をこちらに向けた。


何故か分からないけど、息の仕方さえ思い出せないほどに、呼吸が乱れる。



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