粉雪2-sleeping beauty-
“突き放したかと思えば、今みたいに優しいこと言って”


悪かったのは、俺の方なんだろうか…。


振り回していたのは、俺の方だったんだろうか…。



「…なぁ、千里…。
ずっと…何やってた…?」



涙が出そうなのに、俺は泣き方なんてわからない…。



『…ずっと、海ばっか眺めてたよ…。』


「…そっか。」



…あの部屋に、ずっと独りで閉じこもってたのか…。


連れ出してやれば良かった…。



『…マツは、お酒ばっか飲んでたんでしょ?
ナベくんが、心配して電話してきたよ…。』


「…アイツ…!」


少し不貞腐れたように、眉をひそめた。


そんな俺に、千里は優しく笑いかける。



『…マツにはね、心配してくれる人が居るんだよ。
それってすごく、素敵なことだから…。』


そして、“大切にしなきゃ”と付け加えた。



あぁ、もぉ…


何でコイツは、こんなに俺の心配ばっかしてんだろう…。


まるで、俺の方が見守られてるように感じる。



“一番大切なのは、お前だから”


本当は言いたかった台詞を、唇を噛み締めて飲み込んだ。


また傷つけてしまいそうで、怖かった…。



“マツって結構、残酷なんだね”


そんな言葉が、突き刺さったりもしてたんだ。


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