粉雪2-sleeping beauty-
―カランッ!…

閉店を30分ほど前に控え、俺は千里の店のドアを開けた。


見るとそこには、千里とルミ、そして一人の男の姿がある。


風貌からして、一目で“ホスト”のそれだとわかった。


しかも、纏っている服は汚れの一つも許さないような純白。


ナンバーワンにしか許されない色だ。



『マツさん、いらっしゃい♪』


机を片付けていたルミは、俺に気付いて笑顔を向けた。


いつもとは違う長い黒皮のソファーに身を沈め、煙草を咥えて火をつけた。



…何でここに、ホストが居るんだ?


キャバクラに営業に行くならわかる。


だけどここは、ただのスナックだ。


それも下っ端ならまだしもナンバーワンが、こんなところに居る理由がわからない。


しかも、何か千里と楽しそうに喋ってるし。



『ちょっとごめんね、嵐!』


そう言って、千里は俺の元に駆け寄ってきた。



『ごめんね、マツ!
お酒、持ってくるから。』


「…あぁ。」


短く言った俺を確認し、千里は再び酒を作るためにカウンターに消えた。



『…良いよ、俺。
そろそろ行くわ!』


そんな姿を確認したホストも、笑顔を向けて立ち上がった。



『頑張れよ、千里!』


『嵐もね!』


少しだけ手を振った千里に笑いかけ、ホストは背を向けた。


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