粉雪2-sleeping beauty-
「てめぇのお守りなんか、もぉたくさんなんだよ。
何勘違いしてんのか知らねぇけど、付き合いきれねぇわ。」


『―――ッ!』


瞬間、動けなくなってしまった千里を確認するまでもなく、店を出た。


カランッと大きく音を立てた後、バタンッと扉の閉まる音が背中に響く。



もぉ、何も考えられなかった。


裏切られたような絶望と、吐きそうなほどの胸の痛み。



「何見てんだ、てめぇ?!」


瞬間、目が合った通行人の胸ぐらを掴み、殴り飛ばした。


心臓が壊れそうなほど痛くて、拳の痛みでかき消したかった。


拳の骨が折れるほど男を殴っても、歯が折れるほど食いしばっても、

痛くて痛くて、どーすることも出来なかった。


9月の肌寒い夜風にも気付かず、俺は男を殴り続けた。




なぁ、千里…


俺は間違いなくこの時に、お前のすがる手を離したんだ。


お前は、どんな気持ちだっただろう。


お前の傷は、もぉ塞ぐことも出来ないほどに広がっていたんだ。


なのに俺は、その傷を更に広げた。



ごめんな、千里…。


本当に、ごめん。



痛かっただろう…


苦しかっただろう…


一緒にこの街に来たことが、全ての原因だったのかな?


違うか…。


あの時殺されるのは、俺で良かったんだ…。


そこから、全てが狂ったんだ…。



愛してたんだよ、お前のことを…。


もぉ、自分じゃどうすることも出来なかった。



でも、大丈夫だから…。


今度はちゃんと、お前の幸せを願ってるから―――…


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