粉雪2-sleeping beauty-
―――あの日から、一体どれだけの朝を向かえ、夜が訪れただろう。



事務所に居ても、キャバクラに居ても、居酒屋に居ても…


自分の家でさえも、居場所じゃないような気がした。



千里の為に、この街に来た。


そして、千里の為に続けてきた堅気の仕事。


だけどもぉ、俺がこんな場所に居る意味がない。



築き上げてきた全ての物が、まるで色を失っていくみたいに俺から離れていく。



これから俺は、どう生きれば良いんだろう。


何を守れば良いんだろう。



あれから俺は、女を抱けなくなった。


元々千里の身代わりだったのに、もぉその必要もない。


アイツの面影に縛られるなんて、まっぴらだ。



アイツはずっと、俺の傍に居るんだと思ってた。


兄弟みたいでも良かったんだよ。


愛してたから、アイツが一番大事だったから、それで良かった。



なぁ、隼人さん…


あんたら、あの部屋で何を話したんだ?


アンタは本当に、千里を捨てたのか?


迎えに来る気…ないのか…?


千里がどっか行っても…それで良いのか?



…こんなこと、俺が言える台詞じゃねぇよな…。



生きてるのに…


アイツの傍に居るのに、俺じゃない男の所に行ったんだから…。


所詮アンタも俺も、“過去”なんだよ。


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