粉雪2-sleeping beauty-
電話を切った後、携帯を壁に投げつけた。


カシャンと音を立て、電池パックが外れる。


その瞬間、携帯はただのガラクタに変わった。



「―――クソッ!」


唇を噛み締め、その場に崩れ落ちた。


顔を覆うと、込み上げて来るものを吐き出しそうになる。



否定くらい、してくれれば良かったんだ…。


いつもみたいに嘘を並べてくれれば、馬鹿な俺は信じたかもしれないのに…。




なぁ、千里…


お前はあの時、何で海に行ったんだ…?


隼人さんを思い出すはずの海で、何で俺を思い出したんだ…?



“何があったんだ?”って…


聞いてやれば良かったんだ…。



本当はあの時、泣いてたんだろ…?


そんなことに、俺は何も気付けなかった。



ただお前のことなんて、考えたくなかった。


苦しかったんだよ…。


だけどお前は、俺以上に苦しかったんだろ?



“…弁解しろよ!謝れよ!!
もぉ…振り回すなよ…!!”


最後の最後に伸ばした手を、俺は振り払った。


いつに戻れば、やり直せた?


今度はちゃんと、約束守るから…。


お前もあの約束だけは、絶対守ってくれよ…。


俺にはもぉ、それだけで十分だから…。



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