粉雪2-sleeping beauty-
結局、佐和を抱いた。


あんな女に、取り憑かれたくなかった。


折角忘れようとしてたのに、たった一本の電話で、俺の心を掻き乱す。


“愛してるんだ”って、認めたくなかった。


アイツが他の男に抱かれてる姿を想像するだけで、吐きそうになる。


俺が大切にし続けてた女は、簡単に他の男に奪われた。


あれほど隼人さんのことを想っていた筈なのに…。


俺が何をしたって、忘れさせることが出来なかったのに…。




『幸成!
今度、友達が結婚するんだって!
それでね?―――』


「…うるせぇよ…。」


低く呟いた瞬間、佐和の顔色が変わった。



『…え?』


「うるせぇっつったろ?!
俺がイラついてんのがわかんねぇのかよ?!」


『…ごめっ…なさ…』


怒鳴る俺に、佐和の戸惑いの瞳が揺れる。



千里だったら、何も言わないのに…。


千里だったら、すぐにわかってくれるのに…。


何でこの女は、何もわからないんだよ?!



「…ウザッ…」


苦虫を噛み潰し、吐き捨てた。



『ごめんなさい!!
お願いだから、嫌わないで?!』


俺の腕を揺さぶりながら、懇願するように見上げてきた。


< 186 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop