粉雪2-sleeping beauty-
「…そーゆーのがウザイって、何でわかんないの?」


『―――ッ!』



そうだよ俺は、昔からこんな風だったんだ…。


女なんて、殴って言うこと聞かせれば良いんだ。


あんな女の所為で、変わったなんて思いたくない。


俺は、何も変わってないんだ。



「…素直に俺の言うことに従ってりゃ良いんだよ。」


『―――ッ!』


「…佐和…。
愛してる…。」


『―――ッ!』



ホラ、見ろよ…。


女なんて、簡単なんだよ。


殴らなくても言うことを聞くコイツは、もっと簡単だ。



『…幸成…。
ごめんなさい…。
あたしも愛してるから、許して…?』


そう言って、佐和は俺の首に腕を絡めた。


受け入れるようにキスをし、押し入るように舌を入れた。



なのに、何も感じない。


何にも、心を動かされない。


折角築いたものは、ただの砂上の楼閣で。


千里が居ないと、全ての景色が揺らいで見える。


無意味で、無駄で…。


全然形になっていなかった。



この一年半とちょっと、アイツの為に捧げてきたのに…。


アイツが居なくなったら、俺がこの場所に居る意味がない。



…あの街に戻って、河本の下でやり直して…。


そんなことさえ、頭をよぎり始めていた。

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