粉雪2-sleeping beauty-
『…社長は、ママのことが好きなんだと思ってました。』


俺の目を真剣に見据え、真鍋は口を開く。


『こんなの、おかしいでしょ?!』


その言葉に、深くため息をついた。



「…なぁ、真鍋…。
俺が一言でも、“アイツが好きだ”って言ったことあったか?」


『…それは…。
でも―――!』


「ねぇだろ?」


口ごもる真鍋に、確認するように問い掛けた。


真鍋からの返事は、返ってこない。



「…恩人の女だから、世話してやってただけだよ。
お前まで、何勘違いしてんの?」


『―――ッ!』


再び押し黙った真鍋から目線を外し、コーヒーを流し込んだ。


煙を吸っては吐き出し、コーヒーを口に含む。


そんな作業を、何度繰り返しただろう。



『…もぉ…良いんですか…?』


「何が~?」


最終確認のように聞く真鍋に、ヤル気なく聞き返した。



『…ママのこと、ホントにもぉ良いんですね?』


「…良いも悪いもねぇだろ。
好きじゃなかった。助けてやってただけ。
他に、何もねぇだろ。」



言葉にするのは、簡単だった。


だけど“アイツには男が居る”と言えなかったのは、

その部分だけは目を逸らしたかったからだと思う。


相変わらず俺は、逃げてばっかだ。


お前一人を悪者にすれば、それで良かったんだ。



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