粉雪2-sleeping beauty-
『…マツ…さん?!』


声に振り返ると、ルミが目を見開いて立っていた。



「ルミ!アイツは?!
千里は―――」


言いながら、ルミに駆け寄った。


見開かれていた目が、次第に怪訝なものに変わっていく。



―バチン!

「―――ッ!」


何が起こったのか、全くわからなかった。


渇いた音が響き、次の瞬間には頬に痛みが走る。



『何やってたの、今まで?!
何でママのこと放っておいたの?!』


「―――ッ!」


状況も整理できてないうちから、ルミは俺を責め立てた。


頬の痛みとか、心臓の痛みとか。


もぉ、わけがわかない。



『またあの男が来たんだよ?!
あの男が来て、それで…!』


「…“あの男”って…」


声が震える。


嫌な予感ばかりがして、打ち続ける心臓の音は、更に大きなものになった。



『…あの組長だよ…。』


「―――ッ!」


目を見開いた。


早くなりすぎた心臓が、まるで止まってしまったみたいに体が動かない。


ルミの言葉ばかりがグルグル回っているのに、その意味さえ理解できない。


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