粉雪2-sleeping beauty-
true
―――掴み合っていたのは多分、ものの数秒にもならなかっただろう。
真っ白になっていた頭は、この男に対しての怒りばかりで埋め尽くされた。
『やめてよ、二人とも!!
ここ、病院だよ?!』
割って入ったルミは、俺達を引き離した。
『…アンタ、外で話せる?』
スーツの襟を正した男は、舌打ちをして俺を睨んだ。
そして、答えを聞く前に背を向けて歩き出した。
真っ白な病院に溶け込みそうな服の色に、綺麗にセットされた髪の毛。
後ろ姿さえもオーラを持ち合わせている気がして、それがいけ好かなかった。
心配そうに見つめるルミも、不安そうに見守る病人達も、受付の女も。
全てにイラついて、仕方がなかった。
何で俺が、アイツの男に殴られて、その上話までしなきゃいけないのかがわからない。
それに俺はまだ、アイツの顔さえ見ていない。
殴られた頬は痛いし、打ち付けた背中も痛い。
この男の後ろを歩いているだけで、俺が負けている気分だった。
いや、勝負にすらなっていなかったのかもしれない。
だって俺は、選ばれなかったんだから。
『…“何で殴られたかわかんない”って顔してんな、アンタ。』
「アァ?!」
煙草を咥えた男は、月を見上げて煙を吐き出した。
小馬鹿にされているような気さえして、男を睨みつける。
『…千里を傷つけんなよ。』
「―――ッ!」
そして、顔を近づけてきた男は、俺に向かって煙を吐き出した。
真っ白になっていた頭は、この男に対しての怒りばかりで埋め尽くされた。
『やめてよ、二人とも!!
ここ、病院だよ?!』
割って入ったルミは、俺達を引き離した。
『…アンタ、外で話せる?』
スーツの襟を正した男は、舌打ちをして俺を睨んだ。
そして、答えを聞く前に背を向けて歩き出した。
真っ白な病院に溶け込みそうな服の色に、綺麗にセットされた髪の毛。
後ろ姿さえもオーラを持ち合わせている気がして、それがいけ好かなかった。
心配そうに見つめるルミも、不安そうに見守る病人達も、受付の女も。
全てにイラついて、仕方がなかった。
何で俺が、アイツの男に殴られて、その上話までしなきゃいけないのかがわからない。
それに俺はまだ、アイツの顔さえ見ていない。
殴られた頬は痛いし、打ち付けた背中も痛い。
この男の後ろを歩いているだけで、俺が負けている気分だった。
いや、勝負にすらなっていなかったのかもしれない。
だって俺は、選ばれなかったんだから。
『…“何で殴られたかわかんない”って顔してんな、アンタ。』
「アァ?!」
煙草を咥えた男は、月を見上げて煙を吐き出した。
小馬鹿にされているような気さえして、男を睨みつける。
『…千里を傷つけんなよ。』
「―――ッ!」
そして、顔を近づけてきた男は、俺に向かって煙を吐き出した。