粉雪2-sleeping beauty-
「…何で…お前がそれを…」


『…“ありえねぇ”って言ったら、教えてくれたんだよ。
“馬鹿な三人の話だよ”って…。』


「―――ッ!」



時間が止まったのかと思った。



…アイツが…


自分の口で言ったのか…?



『…“嵐の女なんかなっても、ちっとも楽しくなさそうだね”だって…。
笑うだろ?俺の仕事は、女を楽しませることだっつーのに!』


笑っていたはずの男の顔は、次第に真剣なものになっていく。


その顔から目を逸らし、ライトに照らされて出来た自分の影を見つめた。



『…なぁ、アンタ…。
アイツのこと、見守ってきたんだろ?
何で突き放したんだ…?』


「―――ッ!」



…そうか、俺が突き放したんだ…。



「…苦しいんだよ、アイツの傍に居るのが…。」


ポツリと呟いた。


短くなった煙草を指で弾いて飛ばし、その場にしゃがみ込んだ。



『…俺もこんな仕事してるしさぁ、女のことなんて大体わかってると思ったけど、あの女は別だわ。
何考えてるのか、サッパリわかんねぇ。』


そう言うと、同じようにしゃがみ込んだ。


その姿を横目に見ながら、再び煙草を咥えた。



「…俺だってサッパリだよ。」


差し出されたジッポを受け取り、火をつけた。


オイルの匂いが、微かに鼻につく。



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