粉雪2-sleeping beauty-
『…たいな…と…』


「…え?」


押し殺したように呟く千里に、急に不安になる。


先ほどまでこちらを睨んでいた瞳は、一度伏せられた。


そして、ゆっくりと、千里は口を開く。



『…隼人みたいなこと…言わないで…!』


「―――ッ!」


何を言われているのか、全くわからなかった。



俺が…隼人さんみたい…?


俺は…


あの人とは違うだろ…?


戸惑うように泳ぐ目は、どこに焦点を定めれば良いのかわからなかった。


そんな俺の目をしっかりと見据え、千里は言葉を続ける。



『…隼人と同じ目で、あたしを見ないで…。
隼人と同じこと、言わないで…。
…隼人と同じこと…しないでよ…!』


「―――ッ!」



…今俺は、何を言われているんだろう…。


あれほどなりたくないと思っていた人と、俺が一緒だって…?



「…何…言ってんだよ…?」


笑おうと努力しているのに、口元が引き攣る。



『…もぉ、ずっと前からだよ…。
マツは、隼人と同じ目をしてる…。』


「―――ッ!」



ただ、“言葉を失う”という表現しか出来ないほど、目を見開いたまま固まっていた。


千里の言葉の意味なんて、何一つ理解出来ない。


何か言いたいのに、言葉が出ない。


息苦しさばかりが襲い、心臓の音は早くなる一方だ。


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