粉雪2-sleeping beauty-
点滴が終わり、処方された薬を受け取った。
知らない間に会計を済ませてくれていた嵐に、少しだけ悔しさが残った。
千里は痩せている以外には、前に戻ったみたいに元気で、
“早く煙草が吸いたい”と口を尖らせていた。
そんな当たり前の光景に、少しだけ心が穏やかになった。
ずっと失っていたと思った景色の色が、今はハッキリとわかる。
時刻はすっかり丑三つ時で、薄暗い夜空には、眩いばかりの星空が広がっていた。
背伸びをした千里の口には、いつの間にか煙草が咥えられていて、
エヘへッと笑いながら火をつけた。
それを横目に見ながら、他愛もないことが何故か愛しいと思えたんだ。
―バタン!…
一緒に乗り込んだ車で、当たり前のように千里の横顔がある。
『…何か、懐かしい気分。
マツの匂いがする…。』
助手席に身を沈めた千里は、不思議そうな顔をして呟いた。
「…どんな匂いだよ…。」
『マツ臭い。』
「…臭くねぇよ。」
千里の言葉には、呆れ半分で。
だけど、それで良いと思ってた。
あんな結末になるなんて、この時は思っても見なかったんだ。
だから、安心してた。
取り戻して、全てが元に戻ったんだと思ってた。
だけど、俺達の間には、時間が流れてたんだ…。
撒き戻すことの出来ない時計の針は、今となっては後悔ばかりを植え付ける。
再び壊したのは、俺なんだろうか?
それとも、あの女なんだろうか…?
いや、全ては仕組まれていたのかもしれないな…。
だけど、そんな風にだけは思いたくないんだ…。
知らない間に会計を済ませてくれていた嵐に、少しだけ悔しさが残った。
千里は痩せている以外には、前に戻ったみたいに元気で、
“早く煙草が吸いたい”と口を尖らせていた。
そんな当たり前の光景に、少しだけ心が穏やかになった。
ずっと失っていたと思った景色の色が、今はハッキリとわかる。
時刻はすっかり丑三つ時で、薄暗い夜空には、眩いばかりの星空が広がっていた。
背伸びをした千里の口には、いつの間にか煙草が咥えられていて、
エヘへッと笑いながら火をつけた。
それを横目に見ながら、他愛もないことが何故か愛しいと思えたんだ。
―バタン!…
一緒に乗り込んだ車で、当たり前のように千里の横顔がある。
『…何か、懐かしい気分。
マツの匂いがする…。』
助手席に身を沈めた千里は、不思議そうな顔をして呟いた。
「…どんな匂いだよ…。」
『マツ臭い。』
「…臭くねぇよ。」
千里の言葉には、呆れ半分で。
だけど、それで良いと思ってた。
あんな結末になるなんて、この時は思っても見なかったんだ。
だから、安心してた。
取り戻して、全てが元に戻ったんだと思ってた。
だけど、俺達の間には、時間が流れてたんだ…。
撒き戻すことの出来ない時計の針は、今となっては後悔ばかりを植え付ける。
再び壊したのは、俺なんだろうか?
それとも、あの女なんだろうか…?
いや、全ては仕組まれていたのかもしれないな…。
だけど、そんな風にだけは思いたくないんだ…。