粉雪2-sleeping beauty-
一緒に行ったファミレスで、

お前は最近観たパイレーツオブカリビアンのこと、熱く語ってたよな。


どのシーンで笑って、どのシーンで胸キュンして。


すっげぇどーでも良かったけど、それでも全部、覚えてるんだ。


お前のことなら、全部覚えてる。


ハンバーグ食ったことも、ご飯ちょっと残したことも。


忘れてねぇからな。





「…家、帰るか?」


車の中で、煙草を咥えた。


コイツは今日、どこに帰るんだろう?って…。


結構不安だった。



『…傍に居てほしいんでしょ?』


「―――ッ!」



クスッと笑うその顔を見て、“敵わねぇ”って思った。



「…それは、お前だろ?」


少しだけ安心したように笑い、咥えた煙草に火をつけながら、

シフトをドライブに入れた。


助手席からは、セブンスターとスカルプチャーの混ざり合った香りがしてきて、

隼人さんと一緒なはずなのに、全然違ってて。


お前の横顔に、自然と心が穏やかになった。



失って、取り戻して、また失って、取り戻して…


離れても、絶対何とかすれば、元に戻るんだと思ってた。


でも初めから、“取り戻す”なんて表現は、間違ってたんだ。


お前は、俺のじゃなかった。


そんな一番重要で、一番簡単なことを忘れてたんだ。


この時は、俺達は繋がってるんだと思ってた…。



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