粉雪2-sleeping beauty-
「いつから~?」


『何が~?』


ソファーに座ってクッションを抱いた千里にミネラルウォーターを差し出しながら、

ヤル気なく聞いた。


同じ口調で、千里は聞き返す。



「過呼吸。」


『―――ッ!』


唇を噛み締めて俯く千里の横に腰を下ろし、煙草を咥えた。


受け取られなかったミネラルウォーターを、仕方なく机の上に置く。


返ってこない返事はいつものことで、何も言わずに待ち続けた。



『…ずっと、前からね?
苦しくなることはあったんだ…。』


ポツリポツリと、千里は言葉を紡ぎ出した。


『…初めて過呼吸になったのは、隼人の命日の前かな?』


そう言って、明るく振舞おうとしているのか天井を仰いだ。


『…苦しくて苦しくて、死ぬのかと思った。
でも、“それでもいいかな?”って、ちょっと思ったんだ…。
…なのに、全然死ねないし、苦しくなる一方だし…。』


悲しそうに笑いながら、目を伏せた。


『…それからはまぁ、何度かね。』



何でそんなに、笑って話すんだろう。


何でそんなに、強がろうとするんだろう…?



「…何で…俺に言わなかったんだよ…。」


『…マツにこれ以上、心配掛けさせる訳にはいかなかったんだ…。』


「―――ッ!」


拳を握り締め、必死で押し殺した。


また責めてしまいそうで、それが怖かった。



「…こんなに後になって聞かされるほうが、よっぽど心配するだろーが…!」


『…うん、ごめんね…。
だから、隠してようと思ったんだ…。』


< 215 / 372 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop