粉雪2-sleeping beauty-
「…何であの時…否定しなかったんだよ…?」


『…どの時?』


そう言って、千里は顔を上げた。



「…あの…ホストとのことだよ…。」



言ってて、恥ずかしくなる。


俺がただ、勘違いしてただけなのに。



『言ったでしょ?
マツは怒ってる時は、そっとしといた方がいいんだって…。』


「―――ッ!」



…また…俺の所為…?


何でコイツは…


俺のことばっか考えられるんだよ?!



『…それにね?
海見てた時、“マツのこと解放してあげなきゃ”って思った…。
“あたしは大丈夫だ”って思ってたのに…。』


そして、伏せていた目は、もぉ一度俺を捕らえた。


『…電話切ったら、寂しくなった…。』


「―――ッ!」



涙の痕が、ただ痛々しかった。


苦しめたのは俺だって、わかってるのに…。


なのに俺が、“苦しい”なんて言えるわけがない。



「…ごめんな、千里…。
でも俺は…ずっとここに居るから…。
嫌なら出て行けば良いし、俺が必要だったらここに来れば良い…。」


『―――ッ!』


「…お前が笑っててくれる以外、何も望まないから…。」



再び伏せられた瞳からは、止まった筈の涙が溢れてきて…。


またお前の答えを、聞くことが出来なかった。



だけど俺も同じくらい泣きそうで…。


答えなんて聞いたら、決壊してしまいそうだったんだ。




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