粉雪2-sleeping beauty-
「…飯食った?」


短くなった煙草を机の上にあった灰皿に押し当て、最後の煙を吐き出した。


時刻を見ると、まだ朝の8時だ。


別に電話番なんて事務所に行く必要もないから、

肌寒くなった最近は、この時間帯は家に居ることの方が多い。



『…久々に、モーニング行く?』


「作れよ。」


『…やだ。』


仕方なくため息をつき、冷蔵庫に向かった。


ビールとミネラルウォーターが一緒に並べられており、

中央を陣取っているのは、何故かトッポ。


そんな光景に呆れ半分になりながら、

一番手前にある飲みかけのミネラルウォーターを取り出した。



『…連れてってくれないの?』


「わかったから、待てよ。」


一口含むと、その冷たさが脳天にまで届く。


口を尖らせて見上げてくる千里の顔の前にミネラルウォーターを差し出し、

髪をかき上げて寝室に戻るために足を進めた。



服を着替えて戻ると、そこには星座占いの結果に不満そうな千里の顔があって。


“何でマツが1位なの?!”とか怒られて。


“そんなの知るか”って、心の中で呟きながら。



こんな風に考えると、俺が失くしたものがどれほど大きかったかわかるんだ。


だけどただ、償いがしたかった。


俺はお前のこと、こんな風にしか愛せないんだ。


自分でも、嫌になるよ…。


だけど願うのは、お前が笑っててくれることだけだから。


“これで良かったんだ”って、自分に言い聞かせてる。


俺は十分すぎるほど、お前に包まれてたから。


そのことだけで、朝を迎えられるから。


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