粉雪2-sleeping beauty-
「…お前、女の前でもそんなカンジなのか?」


『…どんなカンジ?』


可愛く聞いているのだろう嵐に、口元が引き攣る。



「そーゆーのだよ!
ヘラヘラしやがって!」


『…こんなんなわけねぇだろ。
女の前では華麗なんだよ、華麗!
何で俺が、男のマツに、しかも金も貰えねぇのに華麗に振舞わなきゃいけねぇんだよ?!』


嵐は箸を俺の方に向けながら、口を尖らせた。



「…何が“華麗”だよ。
馬鹿か、てめぇは。」


ハッと笑った俺を見て、嵐は真剣な顔つきに変わった。



『…力抜いて生きること覚えろよ。
だから千里、俺に“マツの友達”を任命したんじゃねぇの?』


「―――ッ!」


『…アイツ、俺に言ってたぞ?
“マツは、あたしのことで悩んだら、吐き出す場所がないんだよ”って。』


その言葉に、何も言えなくなった。



…悩ませてるお前が、俺の心配するか、普通?


違うか…


“悩ませてる”ってわかってるから、心配してんだな…。


そーゆーヤツなんだよな、アイツ…。



千里の優しさが、ただ悔しかった。


全てお見通しのようで、やっぱり俺は、千里に敵わない。



『“嵐様”って呼んだら、俺がマツの悩みを聞いてやるぞ?(笑)』


「ハッ!馬鹿かよ、てめぇは。」


イタズラに笑った嵐に、諦めたように俺も、少しだけ笑った。


何だか、肩の力が抜けたようにさえ感じる。




なぁ、千里…


真鍋もルミも、俺を許さなかった。


だけど、コイツだけは、わかってくれたんだ…。


お前の“置き土産”って、すげぇな…。


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