粉雪2-sleeping beauty-
「関係ねぇっつったろ?!
お前、初めから俺に愛されてるとでも思ってたわけ?」


『―――ッ!』


佐和はその瞬間、目を見開いたまま固まってしまった。



『…でも…幸成は“愛してる”って…』


「…あんなの信じるやつ居るんだな。
おめでたい脳みそだな、てめぇは!」


戸惑う瞳を見据え、吐き捨てた。



「…わかったら、二度と関わらないでくんない?
マジで、ストーカーみたいで薄気味悪ぃんだけど。」


『―――ッ!』


「降りろよ。
そこは、てめぇの席じゃねぇから。」


煙草を佐和の目の前に突きつけた。


俺の顔と煙草の光を交互に見比べ、佐和は震えながら車を降りた。


バタンと閉まった瞬間、シフトをドライブに入れてアクセルを踏んだ。



やっと、これで終わった。


半分ほど開けられていた窓から、煙草を指で弾いて飛ばした。


煙草と同じように捨てられた佐和の姿に、笑いが込み上げてきた。



最初から選ばれていないのに期待して、嫌われてるとわかってても愛し続けて。


まるで、俺みたいだ。


最初からずっと抱いていた嫌悪感は多分、自分に重なるからだろう。


そんなことにさえ、ヘドが出る。


だけど俺は、あの女とは違う。




結局俺は、一番嫌だと思っていた隼人さんと同じことをしたんだ。


“あの人のようにはなりたくない”と、願い続けてたのに…。


それでもお前は、俺を責めなかったよな…?

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