粉雪2-sleeping beauty-
―カラン!…

『あっ!マツさん!
いらっしゃい!』



やっぱりフラッと立ち寄ったのは、千里の店。


いつもの決まり文句のように、ルミが出迎える。



『あっ、マツじゃん♪』


そんな俺に気付いたのか、千里も声を上げた。



『…やっぱ、お店閉めようよ。
多分もぉ、お客さん来ないよ。』


『だね!
じゃあルミ、電気消すね♪』


そう言うと、ルミは忙しそうにパタパタと足音を立てて走る。



『…浮かない顔して、どーしちゃったの?』


カウンターのいつもの席に腰を下ろした俺に、千里はグラスを差し出す。


水の入れられたグラスに酒が注がれ、タプタプと音を立てた。



「…浮かないから、お前の顔見に来たんだよ。」


『あら、嬉しい♪』


まるで客に言うように、クスッと笑い、おどけて見せる。


そんな顔に少しだけ、俺も笑顔を向けた。



『…寒くなったね…。』


そう言って、自分の半分ほど飲んでいたグラスと俺のグラスを合わせた。


カランッと綺麗な音を響かせ、俺もグラスを持ち上げる。


流し込む焼酎は、喉を熱くさせた。



『お邪魔なルミは帰るね♪』


電気を消して戻ってきたルミは、笑顔を残して店を出た。


そんな姿を二人で見送りながら、少しだけ安心してしまう自分が居る。



「…調子は?
もぉ大丈夫なのか…?」


『…まぁね。』


千里は短く言い、煙草を咥えた。


いつも千里は、目が合うと少しだけ俺に笑いかけ、口を尖らせたように煙草を吸う。


そんな見慣れた光景が、ただ俺の不安を取り除いてくれる。




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