粉雪2-sleeping beauty-
店の外に出ると、いつの間にか粉雪が舞っていた。


今年初めての雪にも気付かず、ただそれを見つめ続けた。



あの人みたいで…


隼人さんみたいで、大嫌いだ…。



だけど結局、俺はあの人に勝てなかった。


最初から最後まで、俺はあの人を超えることが出来なかった…。




無意識のうちに携帯を取り出し、通話ボタンを押した。



―プルルルル、プルルルル…

『はいは~い♪
嵐くんですよ~♪』


やたらテンションの高い声と、後ろで鳴り響くクラブ系の音楽。



「…なぁ、嵐…。
…俺…ヤベェよ…。」



もぉ、何が何だかわからなかった。


ただ、こんな弱気な言葉ばかりが、せき止めることも出来ずに流れ出る。



『オイ、マツ!!
てめぇ、何があったんだ?!
今、どこにいるんだ?!』


捲くし立てるように、嵐の怒声が響く。



「…俺…アイツ失ったら生きていけねぇのに…」


『マツ!!』


遠くで聞こえる声と、電話口の声が重なった。


その瞬間、目を見開いて辺りを見回した。


遠くで、純白のスーツが見える。



「…お前の店って…こんなに近かったのか…?」


『ハァ?!
まさか今、千里んとこ居んのか?!』


“そこで待ってろ!”と言った嵐は、電話を切った。


人混みをすり抜けるように、目立つ頭と目立つスーツがこちらに向かってくる。


それをただ、ぼんやりと眺めながら、“雪みたいな男だ”と思った。


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