粉雪2-sleeping beauty-
『―――何やってんだよ!
つーか、何があったんだよ?!』


息を切らしながら、嵐は捲くし立てた。



「…お前…店は…?」


『馬鹿か、てめぇは!
あんな死にそうな声で電話してきて、店どころじゃねぇだろ?!』


胸ぐらを掴まれ、怒鳴られた。


他人事の様に力なく笑った俺に、嵐も諦めたように俺を掴む手を離した。



「…俺…死んだ男にも勝てなかった…。」


『―――ッ!』


落ち着くためか煙草を咥えていた嵐は、瞬間、目を見開いて手を止めた。



『…そんなの…最初からわかってたんじゃねぇのかよ…。』


何かを悟ったのか嵐は、俺を睨みつけた。



「…そうなんだけどさぁ…。
笑っちまうだろ?」


『笑うかよ、馬鹿が!』


俺の言葉にため息をつき、ジッポを取り出して火をつけた。


嵐から吐き出された煙が、冷たい夜風に消える。


深々と降る雪と煙を見つめながら、失ったものの大きさを改めて感じた。




『…とりあえずお前、店来いよ。』


そう言って歩き出した嵐の後ろを、仕方なく歩いた。


“お前の所為で凍死したら、世界中の女が泣くぞ!”と吐き捨てられ、

そんな言葉に少しだけ笑った。



数十メートル歩くと、同じような雑居ビルは目もくらむような光を放ち、

異世界を匂わせていた。


地下に降りる嵐の後ろを歩くと、

次第に店の中から漏れ聞こえる音楽が大きくなっていくのが分かる。



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