粉雪2-sleeping beauty-
日曜日に起きてみても、やっぱりアイツは居ない。


使われなくなったキッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。



「…冷たっ…!」


口に含み、全身を駆け巡る震えに、身を縮めた。



♪~♪~♪

寝室に置きっぱなしにしておいた携帯が鳴り、

ため息をついてミネラルウォーターを冷蔵庫に戻した。



着信:嵐


―ピッ…

「何~?」


『おう、マツ!!
どーせ暇してんだろ?
出て来いよ!』


ヤル気なく出た俺とは対照的に、相変わらず嵐はいつでもテンションが高い。


いい加減慣れてしまったから何も言わず、

放り投げていた煙草の箱から一本を抜き取った。



「…人を暇人扱いすんなよ…。」


『うっせぇ!
20分くらいでそっち行ってやるから!』


それだけ言った嵐は、俺の返事も聞かず、電話を切った。


耳元で鳴り響くのは、規則的な音だけ。


ため息をついて携帯を閉じ、まだ働かない脳みそのまま漂う煙を見つめ続けた。




「…ったく、あの馬鹿が…!」



“特定の女は作らない主義”とか言っていた嵐は、

結局の所暇を持て余しているらしい。


いつも大体、勝手に呼び出して、俺の返事も聞かない。


そんなことで、昔の隼人さんを思い出す。


次の瞬間に思い出すのはいつも、

料亭で初めて会った時の隼人さんの横で笑ってる千里の顔で。


俺が千里を忘れられない原因は多分、嵐だと思う。



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