粉雪2-sleeping beauty-
―バタン!…

『遅いんだよ、マツ!
普通、迎えに来てやってんだから、待ってたりとかしねぇ?』


助手席に乗り込んだ俺に、嵐はイキナリ声を荒げた。



「…馬鹿じゃねぇの?
何で俺が、そんなことしなきゃいけねぇんだよ?
つーか、それ以前に凍死するだろーが!」


『…それもそうだな。』


何故か納得した嵐は、シフトをドライブに入れて、アクセルを踏み込んだ。


流れ続ける景色は、ただのコマ送りのようにしか感じず、

オーディオから流れる洋楽と一緒になると、まるで映画でも観ているみたいだ。



『…聞かないんだな、千里のこと…。』


「―――ッ!」


煙草を咥えた嵐は、横目で俺を捕らえた。



「…アイツ、生きてんの…?」


『…生きてる…。
嘘臭ぇほど、元気に仕事してるよ…。』


ため息と一緒に煙を吐き出した嵐は、悲しそうに告げた。



「…なぁ、嵐…。
俺、聞きたくねぇんだよ、そんなこと…。」


何も言わない嵐に、言葉を続ける。


「…心配したってどーせ、俺には何も出来ねぇから…。
だったら、何も聞きたくねぇよ…。」


『…連絡すら…取ってねぇのか…?』


戸惑いがちに、嵐はそれだけ聞いてきた。



「…電話して、何て言うんだよ…?
“元気か?”なんて、俺が聞く台詞じゃねぇだろ。」


『…それもそーだけど…。』


そのまま嵐は、押し黙った。



「…アイツが生きてるなら、もぉ俺はそれ以上は望まねぇから…。」


『泣けば良いんだぞ?』


“この胸で!”と言いながら胸を張った嵐に、笑いが込み上げてきた。



「…馬鹿じゃねぇの?」


そんな俺に、少し悲しげに嵐も笑顔を向けた。


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