粉雪2-sleeping beauty-
『―――よし、マツ!
男はこーゆー時、バッティングセンターだ!』


「ハァ?
野球なんか、したことねぇよ。」


眉をしかめた俺に、嵐は“ありえない”とでも言いたげな目で見つめてきた。



『…お前、どーゆー青春時代送ってたんだ?
サッカー少年か、バスケ少年だったのか?』


「…どれでもねぇよ。
つーか、バットなんて、人を殴る以外に使ったことねぇし。」


俺の言葉に、嵐はあんぐりと口を開けた。



『さっきのは、ナシだ。
予定変更にしよう。』


口元を引き攣らせた嵐は、頭を抱えた。



『…俺のこと、殴らない?』


恐る恐る聞いてきた嵐に、フッと笑い、顔を近づけた。



「顔はな。」


『…マツくん、怖いよ…?』


まるで携帯の絵文字のような悲しそうな顔に、思わず噴き出した。


腹を抱えて笑う俺に、呆れ顔の嵐。



結局一緒に飯食って、嵐の買い物に付き合わされて。


振り回されてるけど、まぁ、コイツなりに俺を励ましているんだろう。


それがわかるから、俺も何も言わずに付き合ってやった。



「…なぁ。
“友達”って普通、ここまでするか?」


『…知らねぇけど。
俺、面倒見良いんだよ♪』


「…あっそ。」


ニカッと笑った嵐に、それだけ言った。


やっぱり俺は、“マツ”って呼ぶやつに振り回される運命にあるんだと思う。


だけど結局、それでも許してるんだから、俺自身が甘いだけなのかもしれない。


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