粉雪2-sleeping beauty-
『…飲みに行きません…?
俺、奢りますから…。』


無駄に明るく振舞おうとしているのか真鍋は、少しだけ笑った。



「…従業員に奢ってもらいたくねぇよ…。」


『じゃあ、社長の奢りで!(笑)』



…結局、ソレかよ…。


真鍋の言葉に半分呆れ、だけどコイツまで気を使っていることに、

何だか情けなくなった。



「…その代わり、お前が運転しろよ?」


眉をしかめた俺に、真鍋は“ラジャ!”と言って歯を見せた。


そんな姿に力なく笑い、ゆっくりと身を沈めていたソファーから立ち上がった。




全ての選択は、結局“あの日”に繋がるのだろう。


今にして思えば、“運命”なんてものは、絶対に変えられないものなのかもしれない。


全ての人間の行動は決められていて。


そんな風にしか、俺には思えないんだ…。



“あたしが選んだ人生だよ?”


お前よく、そう言ってたよな…?


俺もそう思いたいけど、今となってはよく分からないんだ。




真鍋が連れてってくれたお好み焼き屋は、クソマズくて。


仕方なく流し込んだ久々のアルコールは、俺の胃を刺激して。


酒を飲んでないのに饒舌の真鍋に、従業員の現場での馬鹿話を聞かされて。


馬鹿みたいにゲラゲラ笑った。




俺は千里が居なくても、何とか生きてるんだ。


だけどアイツが居ない生活は、本当にただ虚しかった。


過ぎてゆく毎日に千里の面影を探し、嫌でも居なくなったことを実感させられる。



本当は、心配で心配で、会いたくて堪らなかった。


そんな弱すぎる自分が嫌で、何事もなかったように振舞って。



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