粉雪2-sleeping beauty-
『…これじゃ…何も意味ないじゃん…!』


俺の服を掴み、千里は声を上げた。


『…あの時…何のために…』


そこまで言い、言葉を殺した。



「…そうだな…。」


千里の言葉が胸に突き刺さり、唇を噛み締めた。



『…酷いよ、マツは…!
何でこんなことばっかすんの?!
また…繰り返すことになるじゃん…!』


そう言って、俺を揺さぶった。


だけど力の込められていない手は、何もならない。


その細い両手首を掴み、揺れる瞳を真剣に見据えた。



「…痛ぇよ、千里…。
俺、怪我人だから…。」


『―――ッ!』


俺の言葉に、千里は悲しそうに目を伏せた。


千里の顔は、涙でグチャグチャになっていた。


そんなことに、胸が締め付けられる。



「…なぁ、千里…。
俺…ずっとお前のことが大切だったんだ…。
だから、お前のこと壊したくなかった…。」


『―――ッ!』


悲しそうに、千里の瞳が揺れる。


俺の吐き出した息は、震えていて。


それを振り払うようにして、言葉を続けた。



「…でももぉ、限界なんだ…。
俺…力ずくでいくから…。」


『―――ッ!』


千里の顔は次第に強張り始め、悲しそうに震えていた。



「…嫌なら、突き飛ばして逃げろ…。
じゃなきゃもぉ、止められないから…。」


『―――ッ!』


俺の言葉に、千里はただ、首を横に振り続けた。


あの時と同じように、何も言わず。

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