粉雪２－sleeping beauty－

『…何でそんなこと…。
あたしにばっか…押し付けないでよ…！』


そう言って、千里はまた唇を噛み締めた。


流れ出る大粒の涙は、まるで千里の不安の大きさみたいだった。



「…じゃあ…何でここに来たんだ…？」


『―――ッ！』


俺の言葉に千里は目を伏せた。



『…マツが…言うからじゃん…！
心配させるから…悪いんじゃん…！』


「…何で心配なんかするんだよ…。
お前だって分かってんだろ？
結局俺ら、何やったって離れられねぇんだよ！！」


『―――ッ！』


千里はただ、声を上げて泣いた。


いつも押し殺したように泣くくせに…。


そんな姿、見たくねぇんだよ…！



「…死ぬかと思って…。
“今度生きる時は、お前に一番に会いに行こう”って思った…。
…俺…生きてたから…。」


紡ぐ言葉はたどたどしくて、だけど伝えたかった。


「…言ったろ？
俺はもぉ、お前なしじゃ生きられないんだよ…。
だからもぉ、どんな手使っても、お前を俺のものにするから…！」


『―――ッ！』


「…嫌なら早く…逃げてくれよ…！」


だけど千里は、首を振り続けた。


逃がしたくなくて、握り締める手に力を込めた。





「…時間切れだよ、千里…。」


『―――ッ！』


瞬間、大きく見開かれた目は、俺を捕らえた。