粉雪2-sleeping beauty-
「…逃げられなかった、お前の負けだ…。」


『…やだよ、マツ…!
こんなの…嫌だよ…!』


千里はまるで、小動物みたいに震えていた。


自分が千里に対し、どんなに酷いことをしているのかがわかる。


俺は、絶対に千里が逃げられないとわかっていたんだ。


だけどもぉ、こうするしかなかった。



優しくしたって、甘やかしたって、結局何も変わらなかった。


離れようとしても、離れても…。


結局俺達は、離れることが出来なかった。


ならもぉ、力ずくで俺のものにするしかないんだよ…。



「…俺が…忘れさせてやるから…。
あの人から…抜け出させてやるから…!」


『―――ッ!』


「…なぁ、千里…。
俺とだったら…絶対幸せになれるから…!
俺だってお前と…幸せになりてぇんだよ…!」



だけど何を言っても、何をしても、千里はただ、首を振り続けた。


逃げることも、答えを出すこともない。







『―――幸成!!』


「―――ッ!」


引き裂くような声で呼ばれ、驚いて目を見開いたまま、

ゆっくりと声のする方に顔を向けた。


居る筈のない佐和の姿に、生唾を飲み込んだ。



―パシッ!

「―――ッ!」


その瞬間、腕が振り払われた。


恐る恐る見ると、千里は俺の手を振りほどき、

顔を強張らせながら後ずさりをしている。


今、何が起こっているのかなんて、全くわからなかった。


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